2016年3月6日日曜日

水の話  その2

水の話  その2 CRYSTAL  Home      
 
 
Chem.Rev.2008,108,74Philip BallReview: Water as an Active Constituent in Cell Biology
サイエンスライターである、Philip Ballの総説で、主として細胞生物学的な内容であるが、著者は物理学専攻であり、水の構造についても、参考になる。
 
 
 
Nature452, 291(2008)Philip BallWater: Water — an enduring mystery
水についてのエッセー。北斎の浮世絵の意味は?
Science, 304, 995(2004) 以来の水の構造モデルに対する冷ややかな批評。chains and rings モデルは 「水のヒモ理論」だと茶化す。
 
Teresa Head-Gordon,Greg Hura : Water Structure from Scattering Experiments and Simulation
Chem. Rev., 2002, 102 (8), pp 2651?2670 DOI: 10.1021/cr0006831
August 2002 Volume 102, Issue 8 Pages 2625-2854が,水の特集ですが,やや特別な分野になりますので,これだけ上げておきます。これとて,構造化学の実験と計算ですが。
 
 
 
 
少し古いですが,水の構造に関する総説。
Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,1808Ralf LudwigReview: Water: From Clusters to the Bulk
I woud like to focus on recent progress  in calculating  and measuring  water  cluster  and  their  properties .  と書かれているように,クラスターを中心に実験,理論にまたがる総説。
 
 
 
Chem. Rev.2008, 108 , 5014Alessio Alexiadis and Stavros KassinosReview: Molecular Simulation of Water in Carbon Nanotubes
カーボンナノチューブの中の水についての総説。今後この分野での展開が楽しみですね。
 
 
 
 
Nature452, 301(2008) Mark A. Shannon, et al. 
Review: Science and technology for water purification in the coming decades
水の浄化についての総説
 
    
 
 
Chem.Rev.2008, 108 , 4483Steven M. StanleyReview: Effects of Global Seawater Chemistry on Biomineralization: Past, Present, and Future
海水ですから,水よりもそこに溶けているミネラルの総説。カルシウム,マグネシウム,炭酸イオン,そして二酸化炭素など。
 
 
 
 
 
Reviewではありませんが,mini Reviewのようなものですから,ここに記しておきましょう。少し古いですが。
Frank H. Stillinger :Water Revisited
Science 25 July 1980 209: 451-457 [DOI: 10.1126/science.209.4455.451]
 
 
 
 
 
ここからは,一般論文です。速報も含めて。新しいものが上にくるようにしております。(年単位で)
 
 
N. Galamba and B. J. Costa Cabral :The Changing Hydrogen-Bond Network of Water from the Bulk to the Surface of a Cluster: A Born-Oppenheimer Molecular Dynamics Study
J. Am. Chem. Soc., 2008, 130 (52), pp 17955-17960 DOI: 10.1021/ja807111y
表面にある半分の「受容体のみ」の分子の存在にもかかわらず、水素結合のネットワークは,表面でのほうが,クラスターのバルク部分におけるより不安定で、単一のドナー-アクセプター配置は境界部分で広く支配されている。
 
 
 
 
Phys. Rev. Lett. 100, 166101 (2008) T. Kumagai, et. al.Direct Observation of Hydrogen-Bond Exchange within a Single Water Dimer
6Kで,銅の表面で,トンネル走査顕微鏡をもちいて二量体の水の水素結合のドナーとアクセプターの交換を観察した。重水の約60倍の速度で交換が行われた。
 
 
 
J. Chem. Phys.  129, 124512 (2008)Haigang Lu,et.al. Hydrogen-bond network and local structure of liquid water: An atoms-in-molecules perspective 
Science, 304, 995(2004) のようなフィラメント状配置よりも,部分的には歪んだ正四面体配置をとるだろう。300Kでの水素結合の平均値は3.5個になる。
 
 
 
J. Chem. Phys.  129, 084502 (2008)Mikael Leetmaa,et.al. Diffraction and IR/Raman data do not prove tetrahedral water 
Science, 304, 995(2004) のような水の構造は計算の結果,否定的である。
 
 
 
J. Chem. Phys.126, 204107 (2007)R. Kumar, et.al.Hydrogen bonding definitions and dynamics in liquid water
Science, 304, 995(2004) で提出されたモデルを否定する。
1分子あたりの水素結合は3.2から3.6個の間である。水分子は1分子あたり3個の水素結合をもち,そのうちのいくらかは他より強い。大部分の水分子は2つのドナーをもっている。このように従来からいわれているように,きわめて不規則だが多かれ少なかれ対称的な正四面体構造をとる。これらはScience, 304, 995(2004) で提出された描像ではない。
 
 
Phys. Rev. B73, 024205 (2006)Michael Odelius,et al.X-ray absorption spectrum of liquid water from molecular dynamics simulations: Asymmetric model
古典的な分子動力学を用いて非対称なモデルでシミュレーションした結果、一つの強いドナーと、一つの弱いドナーの水素結合が存在することがわかった。
 
 
 
J.Phys.Chem.B2006,110,20038Jared D. Smith, et al.Probing the Local Structure of Liquid Water by X-ray Absorption Spectroscopy
種々の計算値と実験値とを比較すると、rings and chains structureについて、定性的には新しい洞察を含むものだが、定量的には、満足しがたい。しかし、液体の水についての50年以上にわたる研究をひっくり返して継承するものであると結論する。
 
 
 
Phys. Rev. Lett. 96, 215502 (2006)David Prendergast and Giulia GalliX-Ray Absorption Spectra of Water from First Principles Calculations
壊された水素結合の割合は,Science, 304, 995(2004) で提出された描像ではなく,従来からのモデルを満足させる結果となった。
 
 
 
 
J. Phys. Chem. B2005, 109 , 13835L.-A. Naslund,et.al.X-ray Absorption Spectroscopy Measurements of Liquid Water
Science, 304, 995(2004) の新しいモデルを支持する論文。
 
 
 
Science 304, 974(2004)Yan Zubavicus and Michael GrunzeNew Insights into the Structure of Water with Ultrafast Probes
水の構造に関して最近得られた,Ruanらや,Wernetらの研究を比較し,水分子が近くの水分子といかに相互作用するか検討した。
 
 
論争を引き起こした問題の論文です。
Science 304, 995(2004)Ph. Wernet,et al.The Structure of the First Coordination Shell in Liquid Water
X線吸収スペクトルとX線ラマン散乱を用いた,1つの分子をとりまく最初の層の分子配列に関する研究。多くの水分子で,ひとつの水分子が,1つの強いドナーと1つの強いアクセプターとして働く2つの水素結合をしている。これは,正四面体構造をした4つの水素結合がある氷とは異なる。25℃から95℃まで加熱すると5~10%の水分子が正四面体形から2つの水素結合型配置に変わった。この発見は,中性子散乱やX線散乱の実験データも満足させる。
most molecules are arranged  in strongly  H-bonded chains  or  rings  embeded ・・・ 
 
 
Science 304, 80(2004)Chong-Yu Ruan,et al.Ultrafast Electron Crystallography of Interfacial Water
超高速の電子線回折法を用いた親水性表層で原子レベルでの膜の形成と分解についての研究。
 
 
   
Nature416, 409 (2002)Masakazu Matsumoto, et.al.Molecular dynamics simulation of the ice nucleation and growth process leading to water freezing
水の凝固のようすの分子動力学にもとづくシュミレーション。水分子が徐々にからまって氷の正四面体構造になっていく様子のシュミレーション図は感動的です。
 
 
 
 
 
Phys. Rev. B66, 092107 (2002)U. Bergmann, et al.X-ray Raman spectroscopy at the oxygen K edge of water and ice: Implications on local structure models
酸素K-egeで水と氷のX線ラマンスペクトルを測定した。液体の水を研究するのに有効なツールとなるが限界もある。
 
 
 
 
Scientific American215,118(1966)L.K.RunnelsIce
図が多くてわかりやすい。
 
 
 
 
水素結合に関する記念碑的論文
J. Am. Chem. Soc.1920, 42 , 1419Wendell M. Latimer, Worth H. RodebushPOLARITY AND IONIZATION FROM THE STANDPOINT OF THE LEWIS THEORY OF VALENCE.
p.1431にひとつの水分子の酸素の非共有電子対がもうひとつの水分子の水素原子(共有結合で酸素と結合している)との間に二つの分子をくっつける十分な力が働く,と書かれております。
 
 
 
 
 
 
ここからは水関連書籍の紹介(列挙)です。
荒田洋治著「水の書」共立出版,1998 
同じ著者の岩波ジュニア新書版は,本書と重なるところはあるが,ユニーク。
Philip Ballのエッセー Nature,452, 291(2008)を読んだ後で,ポリウォーター論争の回顧を読んでみると,なかなか示唆に富んでいることがわかる。「ポリウォーターの議論はまた,液相系を分子の言葉で理解しようとする場合に遭遇する困難とも切り離して考えられない。(中略)議論の対象は液体である。すでに繰り返して述べたように,液相は,時間的にも,空間的にも不均一である。少なくとも現時点では,われわれはこのような系を対象とした構造研究の手段をもたない。」 (pp.184-185) 「構造研究の手段をもたない」については,「すぐあとで議論を続ける」とあるから,このまま鵜呑みにしてはいけないが,大筋において,そのとおりだと,思う。だから,2004年Science, 304, 995(2004) 以来の論争も本当の意味での正誤が明らかになるのは,ずっと先のことになるだろう。この論争に終息宣言を出したPhilip Ball の常識に賛意を表する。もちろん,各国の研究者たちが,次々に測定や計算をして,理解が深まることはいいこではありますが。そして,様々な水論争についての教訓がp.188-189に述べられている。Philip Ballのエッセーと併せて,論争を傍観しながら読むと,なるほどと思う。
 
 
カウズマン,アイゼンバーグ著関集三,松尾隆祐訳「水の構造と物性」みすず書房,1975
 
 
 
フィリップ・ボール著荒木文枝訳「H2O -水の伝記-」ニュートンプレス,2000
 
 
ここより後は,新しいものが上にくるようにします。
久保田昌治,西本右子著「これでわかる水の基礎知識」丸善,2003 
機能水とか,磁気処理水などの,話もあります。
 
 
 
 
荒田洋治著「水を知ろう」岩波書店,2001岩波ジュニア新書378
中学生や高校生にとっては,参考文献を探すよりも,インターネットで探すほうが速い。そのようなことを配慮して,豊富なURLが紹介されている。ただ,これを打ち込むのは大変。「・・・について」とあるところは「・・・」で検索すればいいが・・・。
 
 
 
 
鈴木啓三著「水の話・十講」化学同人,1997副題:その科学と環境問題,2000年,3刷
Ⅰ水の科学  Ⅱ環境としての水(半分以上)
 
 
 
 
土木学会関西支部編「水のなんでも小事典」講談社,1989ブルーバックスB-795,副題:飲み水から地球の水まで
著者:盛岡通,椎葉充晴,奥田朗,山本美子
この本も買ったときは,新しかったのですが・・・。でも,歴史的なことなどが多く,そんなに古びてはおりません。楽しい本です。
 
 
 
 
小島貞男著「おいしい水の探究」日本放送出版協会,1985NHKブックス487,1997.8,21冊
技術的な進歩や,時代の流行廃り(はやりすたり)を除けば,原則はたいして変わらないだろうから,こういう本は古くても読みがいがあります。おいしい水を求める一番は,上流の環境をよくする以外にはないのですが,一度悪化した環境では少々のことでは,水は戻らない。だから,人間の苦労が始まるわけですね。浄水器などつけますね。その廃棄物はどこで処理されるのでしょうか。これがまたごくわずかにしても環境を悪化させることは確実ですね。天に向かって唾を吐いているようなものですね。
 
 
 
伊勢村寿三「水の話」培風館,1984大木道則編集 化学の話シリーズ6
 
 
 
内海誓一郎他著「水-生命のふるさと-」共立出版,1974共立化学ライブラリー7,
他の著者:鈴木啓介,坪田博行,野田春彦,妹尾学,吉田章一郎
「水を異常な物質であると記述することはあまりにも公式的である。人は,水がそのような物性をもつ物質であると直観的に認めてきた。そこに水素結合という力が働いているという説明は,水が簡単なH2Oという分子からできていると速断したことに対する修正である。」(p.2,内海)
 
 
K・S・デイヴィス,J・A・デイ著戸田盛和,小暮陽三訳「水の伝記」河出書房,現代の科学20,1969
この時代に,このシリーズですからね。PSSC物理にはじまる,アメリカの理科教育改革運動の成果でしょうか。その副読本でしょうね。このシリーズは,尾道の防地口にあった古書店でまとめて買いました。(安かった)
水を人類が利用する過程で,社会制度や道徳なども,「われわれと同様に,水から生まれたのである。」(p.13)
 
 
大場英樹著「水はめぐる」社会思想社,教養文庫,1976現代の博物誌-水,他の執筆者:中山茂,川村康一,里深文彦
 
 
 
 
ウラジーミル・デルプゴリッツ著堀江豊訳「水の世界」講談社,ブルーバックスB258,1975第1刷,1979第5刷 
昭和59年3月20日に読み始めた私は,「内容のすべての信ずる訳にいかないので読むのをやめる」と書いて,投げ出した。ポリウォーターとか,水の記憶とかあるから,当時の判断は誤っていなかったとおもう。
 
 
 
池内了著「泡宇宙論」早川書房,ハヤカワ文庫,1995 
宇宙論の本だが,第1章,2章には泡の話がたくさんあります。
 
 
 
 
ポーリング著小泉正夫訳「化学結合論」共立出版,1942初版,1943再版,1946三版
第9章 水素結合 となっております。
 
 
 
 
雑誌特集です。
Newton ニュートン2005年10月号特集:「水」-生命を育む物質pp.28-55
水の構造から宇宙の話まで。pp.112-123は「バイキング」。美しい海の写真が・・・。
 
 
 
雑誌特集
Newton ニュートン2008年1月号日本の川pp.116-127
利根川の美しい写真が・・
 
 
 
 
リンク集
国土交通省http://www.mlit.go.jp/index.html 
    水資源 http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/index.html
    日本の水資源(白書)http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/hakusyo/index5.html
 
独立行政法人 水資源機構http://www.water.go.jp/
財団法人 水資源協会http://www.jawa.or.jp/
 
ウォーターデザイン研究所http://www.waterdesign-wd.co.jp/  
ウォーターデザイン研究会http://www.waterdesign-wd.com/index.html 
 
ストックホルム環境研究所 http://www.sei.se/index.php